怪物クン

ロッテ・佐々木朗希投手のファンブログです

6月11日 対広島戦関連

 

ロッテ佐々木朗希投手(21)が己をまた一つ超えた。プロ入り後の自身最多となる109球を投げ、本拠地で初の165キロもマークした。6回終了時には吉井監督に続投を志願。若きエースが自覚たっぷりに7回2失点で今季5勝目を挙げた。三振も10個奪い、リーグトップの79奪三振。満員御礼のファンの前で連勝に導き、リーグ首位の勢いも加速させた。

 

「もう1回いきたいです」。佐々木朗希が95球で6回を終えてベンチに戻ると、吉井監督に力強く伝えた。

「常に1イニングでも多くとは思っていますし、今日に関しては5回に(2点を)取られて自分で点差を縮めたので、自分でいって抑えないと勝ちにふさわしくないと思った」

これまでは100球前後が目安だったが、みずから”朗希基準”を超えた。

「球数よりもイニング。(中指のマメで)5月にけっこう(登板が)飛んでしまったので」

プロ4年目を迎え、侍ジャパンWBCも経験し、チームを引っ張る自覚の象徴だった。

 

吉井監督も決断を尊重した。「いずれは(常時)100球超えしなくちゃいけない。110球近くまで。本人にいく気があるのなら今日かなと思って」

「120球を超えてくると、中6日はきついと思う。(現時点では)110球前後。そのへんは彼の体の成長を見ながらやっていきたい」

 

佐々木朗希の気持ちを熱くさせたのは、5回の失点場面だ。

「フォアボールがいちばん嫌だったので」と直球を押し、4球目に日本人最速タイの165キロ。最後は9球目の163キロ直球を左前に運ばれた。昨年から続いたZOZOマリンでの連続イニング無失点も「33」で止まった。「決めきれなかったのは相手が一枚上でした」

だがその反省も生かし、6回以降の4奪三振はすべてフォークだった。

 

お立ち台では「来週も勝てるように」

2万8738人の大観衆に、笑顔で右腕を上げて約束した。

 

有藤通世 視点】佐々木朗希の4回までの投球は完璧だった。初回先頭の西川が初球の直球を打って二邪飛。2番の野間も初球の直球を振ってきた。

ここで佐々木朗希は投球の組み立てを切り替えた。直球で押すのではなくフォークを主体にストライクゾーンで攻めていく。2回、松山は落差の大きいフォークで空振り三振。田中にはフォークをカウント球に使い、最後は163キロで空振り三振に斬った。序盤3回で29球中18球がフォーク。球数を抑えて軽々と乗り切った。前回登板の阪神戦では見逃し三振OKの待球作戦に屈する形で6回102球を投げさせられ敗戦。その反省もあり、序盤は球数を抑える投球に徹した。

 

ただ、直球主体に切り替えた5回は課題が残った。走者を出すと力むし、投げ急ぐ傾向にある。165キロも記録したが、力みがあって伸びがないからファウルで逃げられる。球数もかさみ5回だけで35球。7回を109球。欲をいえば同じ球数であと1回は投げたい。完投とはいわないが、最多勝を狙うには自分で試合の勝ち負けを決する投球をしてほしい。

 

佐々木朗希がファンを魅了したのは、投球だけではなかった。中継ではヒーローインタビュー後、金網越しにサインする佐々木朗希の姿に注目。足を止めるのはすべて子どもの前で、実況は「サインをここでもします。小さな女の子が金網をつかんで佐々木朗希を見ています」などと伝えた。

 

さらに、ポケットからウイニングボールを取り出すと、客席へポイッ。「ボールもあげちゃうんですね」と実況が話すと、グラブに収まったボールを嬉しそうに持ち、走っていく少女の姿も捉えた。実況は「この女の子がボールをゲットしたそうです。嬉しそうです!」と伝えた。

 

佐々木朗希は中継に映っていないところでも、ヒーローがもらえる球団マスコット「マーくん」のぬいぐるみをファンにプレゼント。これも子どものいる場所を選んで歩み寄っていた。

佐々木朗希にとっては珍しい光景ではないが、この様子にネットでは「佐々木朗希ナイスガイ!」「ファンサも完璧」「佐々木朗希、優しいなあ」「成績も内面も良い選手ですね」「人柄の良さが伝わってくる」など絶賛の嵐となった。

 

4年目を迎えた右腕の成長を、ロッテ担当記者が「見た」。

朗希の頬が一瞬、緩んだように見えた。2回の守備開始前だった。

「ローキ、ローキ、ローキ~、ローキ、ローキ、ローキ~、ローキ、ファ~イ~ティン」

佐々木朗希がアンバサダーを務めるロート製薬のおなじみのCMメロディーに合わせ、「ローキの歌」が球場内3つのビジョンで放映された。通常のCMではハトが社屋から飛び立つが、カモメがコラボされる特別バージョン。マウンドにいた朗希は思わず左翼ビジョンを振り返り、「全部は分からなかったけど、スタジアムの笑い声に負けないように(投球)してました」と笑った。

 

昨季までなら、ここまでの余裕はなかっただろう。プロ4年目。投球にも進化と余裕が見られた。勝負どころの5回には日本人&自己最速タイの165キロを計測したが、序盤の無走者時は150キロ後半とセーブ。1年間を戦うため、ギアの入れどころも自在になってきた。4日の阪神戦で自己最多5四死球が響き初黒星を喫した反省を生かし、1四球。7回2失点10Kで5勝目を挙げた。

 

試合前まで雨の影響で「湿気ある中で思うようにいかないところもあった」とボールの扱いが難しい中、フォークを直球と近い割合で投じ、ストライク先行と的を絞らせない投球を両立。7回は続投を志願するなど、柱としての自覚も備わってきた。

 

チームは連勝で首位をキープ。肉体の成長に加え、心の余裕も生まれた4年目。ビジョンに映ったカモメのように、朗希はここからさらに、鮮やかに羽ばたいていく予感がある。(ロッテ担当・小田原実穂)

 

165キロをファウルしてヒットした羽月選手について

佐々木朗希は吉井監督と同じ言葉で「バッターが一枚上手だった」と脱帽した。165キロ。それについていった羽月。対打者の個別の勝負となると、佐々木朗希がすご過ぎて、妙味に欠けることが多い。この打席は今季の名場面に数えられるかもしれない。

佐々木朗希の109球はプロ入り後最多。35球を要した五回を含め、粘ったことで吉井監督は「(もう一段の)成長につながる」と話した。好敵手を得て殻を破る、という点では羽月が得たものも大きかったに違いない。

 

岩本強氏

「スピードも出ていましたし、志願して7回もマウンドに上がると。自分で自分にすごくチャレンジしている佐々木がいたと思うんですよね。また勝ち星がついたことは何よりではないでしょうか」と評価。また今日の調子はイマイチだったとのコメントには、

「一年間のうち、絶好調なんて、例えば26試合や27試合先発としてマウンドに上がっても、数試合なんですよ。たぶん3試合か4試合くらい」と自らの経験を踏まえて解説し、

「それを基本としたときには今日の自分はあまり良くなかった、でもそこからどうやってバッターをアウトに取るのかというところが、投球、ピッチングなんですよ。それを感じ出している佐々木に一層ロックオンですね。そういう発言があったからこそロックオンしたいピッチャーとして、改めて挙げたいですね」とさらに注目していきたいと熱く語った。

 

あまりにも凄まじい勢いで進化を遂げている佐々木朗希(ロッテ)

WBCにも出場した彼への注目度は、アメリカでも日増しに高まっている。MLB.comのレポーターとしても活躍するマーク・ファインサインド記者が各球団の幹部に佐々木の評価を聞いた。

 

日本ですでに伝説を作った佐々木朗希は、2023年のWBCで最も興味を惹く選手のひとりとなった。驚くべきことに、21歳の右腕は周囲の過剰な期待に応えるどころか、それを上回るほどの活躍を見せている。

 

MLB球団スカウト

「現時点ですでに地球上で最高級のファストボールを投げる」

「100マイルを超える速球に加えて、スプリッターというワールドクラスの決め球も持っている。実際、あれほど圧倒的なスプリッターを投げる投手はほかにいないよ」

「もし彼が今年のMLBドラフトで指名資格があれば、間違いなく全体1位で指名されるだろう」

「佐々木は(今ドラフトで最高の投手とされるポール・)スキネスよりレベルの高いリーグでほぼ同等の成績を残している。大谷もダルビッシュも、今季の彼ほど高い奪三振率(6月11日時点で13.94)を記録したことはない。しかも、コンタクト率が高いリーグでそれだけの数字を残しているんだ」

 

球団幹部

「数年前、圧倒的な投球を見せていた頃のデグロムに最も近い存在だと思う」

MLBレベルのスライダー、カーブが加わればアメリカでも最高級の投手になるだろう」

「デグロムと同じ速球・スライダーのコンビネーションだけじゃなくて、空振りを量産するスプリッターもある。メジャーでもエース級の投手になるポテンシャルを秘めている」

 

「ムリのない投球フォームからエリートクラスの球を投げる。将来的には優秀なコマンド※能力も身に着くだろう。可能なら、少しでも早くMLBに来てほしいね」

※コマンド‥‥狙ったスポットにボールを投げ込む能力のこと。「コントロール」はストライクを取る能力を指す

 

佐々木朗希は、投球の大半がストレートとフォーク。たまにスライダーを投げるものの、球種はほぼ2つと言っていい。打者にとっては二者択一、どちらかに的を絞れば攻略できそうなものだが、そうもいかない。160キロ超の速球と落差の大きなフォークは、それだけ威力のある証左だろう。が、首脳陣は、佐々木をさらにスケールアップさせるプランを温めているという。

 

ロッテOBの話。

「佐々木のストレートは160キロ超、フォークも140キロ台です。2球種とも桁外れの速さでなおかつ球質も優れているだけに打者をねじ伏せていますが、緩急を使えるようになればピッチングの幅はグンと広がる。理想は120~130キロくらいの変化球を投げられるようになること。つまりカーブです。

佐々木は変化球を投げるのが好きだし、手先も器用なので、その気になれば十分、カーブは手の内に入れられると思いますよ」

 

今季はここまで51回を投げて12球団トップの79奪三振規定投球回数に達していないとはいえ、防御率も1.41と秀逸だ。

現時点でメジャー球団も垂涎の佐々木が、カーブを手の内に入れて緩急を使えるようになったら、160キロ超の速球はさらに効果を増すだろうし、投手としてもいま以上の存在になるのは確実だ。